こんにちは 福祉用具大好き作業療法士 ふくまつです。
今回は車いすの種類であるリクライニングタイプとティルトタイプについて紹介します。
この記事はこんな人にオススメです。
ではよろしくお願いします。
リクライニングとティルトの違い
簡単に言えば
背もたれの角度を変えられるのがリクライニング。
車いすそのものの角度を変えられるのがティルトです。

リクライニング車いすのイメージとしては新幹線の座席を思い浮かべてもらえると良いかと思います。
では、それぞれのメリットとデメリットを説明します。
リクライニング車いすのメリット
まずはリクライニング車いすのメリットです。
- 寝たままに近い状態で、車いすに乗車できる。
- ”構え”と”体位”の両方を変更できる。
寝たままに近い状態で、車いすに乗車できる

それってどんな時に役に立つの?
例えば
病気や加齢に伴う体力の低下などで体を起こすのが辛い方。
普通の車いすでは、乗り移る際にどうしても一度体を起こさなければなりません。
また、乗った後も背もたれがあるとはいえ座った姿勢を維持し続けなければなりません。
それがしんどくて車いすに乗ることができないという場合があります。
しかし、リクライニング車いすを使えば、ベッドに寝たままの状態で体を横に平行に滑らせることで乗り移りを完了できます。
また、疲れ具合などに応じて背もたれの角度を調整できるので、その時の自分に合った角度で過ごすことができます。
“構え”と“体位”の両方を変更できる

構え?体位?
“構え”とは、頭・体幹・手足の相対的な位置関係を表します。
“体位”とは、座った姿勢、寝た姿勢など、体が重力に対してどの方向にあるかを表します。



この2つの骸骨は“構え”が同じだけど、“体位”が違うよ。



この骸骨は“構え”も“体位”も違うね。
〈参考:高齢者のシーティング 第2版 著者:廣瀬秀行 木之瀬隆 三輪書店〉
高齢者の場合、“構え”が同じ状態のままいろいろな“体位”を取っていることがあります。
身体が拘縮などで硬くなるとそういうことが起きます。
リクライニング車いすを使用することで、膝関節や股関節が曲がった状態から伸ばされた状態になるので、それらの関節が硬くなるのを予防できます。
リクライニング車いすのデメリット
次にリクライニング車いすのデメリットです。
- 体が前にずれやすく、そのままにしておくと床ずれが生じる。
- 食べるときの姿勢調整がむずかしい。
体がずれやすく、そのままにしておくと床ずれが生じる
リクライニング車いすのデメリットは何といってもこれです。
背もたれの上げ下げを繰り返すと、徐々に体が前に滑ってきます。

そうすると、腰やお尻に摩擦や組織が引っ張られる力が働いて、その部分の血流が悪くなり床ずれを生じます。
その都度姿勢を直し、背抜き(圧を分散させること)を行えばよいのですが、介護施設などでは業務に追われてなかなかそこまで手が回らない現状もあります。
しかし、一度床ずれができてしまうと、その後が大変です。
リクライニング車いすを使用するときは、こまめな姿勢の修正と、腰やお尻の皮膚状態をしっかりとチェックする必要があります。
食べるときの姿勢調整が難しい
これも結局は前に挙げた滑りやすさの影響もあるのですが、せっかく調整しても徐々に滑ってきてしまい、ベストな位置からずれてしまうことが良くあります。
また、食べものを飲み込むとき、人は顎を少し引いた姿勢が飲み込みやすいのですが、リクライニング車いすのヘッドサポート(枕部分)は上下の位置調整はできても、背もたれから離せることが少ないです。(細かく調整できるものもあります)
そのため、対象者によっては顎を引かせるためにタオルやクッションなどを、その人に合わせて追加しなければならないことがあります。


上手に調整できてみんなが同じやり方を統一できれば問題ないのですが、顎がうまく引けずに上を向いたまま食事をすると誤嚥のリスクが高まるので注意です。
まとめです。
リクライニング車いすは、「体力がなくても乗ることができる」が、「姿勢の調整に介助者のスキルが必要」
では次にティルト車いすのメリットを紹介します。
ティルト車いすのメリット
- 角度をつけることで前すべりが防止できる。
- お尻の圧を背中へ分散することができる。
角度をつけることで前すべりが防止できる
先ほどのリクライニングのデメリットで“体が前に滑りやすい”ことを紹介しましたが、それを解決したのがこのティルト車いすです。
ティルト車いすはリクライニング車いすと違い、車いすそのものの角度を変えることができます。
つまり、背中を倒すとその分だけ座面も倒れます。
この傾斜が前すべりを防止してくれます。

ただこれには気を付けなければならないこともあるので、それについてはデメリットで紹介します。
お尻の圧を背中に分散することができる
普通型車いすに良い姿勢で座った場合では、体の重さの60%以上はお尻と太ももの裏で支えています。
しかし、ティルトを使用することで、その圧力を背中にも分散できるので褥瘡予防に一定の効果が期待できます。


かといって、ティルトだけで完全に褥瘡を予防できるかといえばそうではないので注意しましょう。
では次にデメリットについて紹介します。
ティルト車いすのデメリット
- 身体拘束の手段になりえる。
- テーブルに手が届きにくくなる。
身体拘束の手段になりえる
自分で立ち上がったり歩ける人に対し、それらをできなくさせる目的でティルト車いすの傾斜をかけることは身体拘束に該当します。
厚生労働省の「身体拘束廃止・防止の手引き」には身体拘束廃止・防止の対象となる具体的な行為が挙げられています。
その中に
立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
と書かれています。
実際にやってみるとわかるのですが、ティルト車いすに乗って傾斜をかけるとかなり立ち上がりにくくなります。
というかほぼ立ち上がれません。

重力を使って車いすに縛っているのと同じことなので、こういう目的でティルト車いすを使用するのはやめましょう。

リクライニング車いすもティルト車いすも“自分の力で座る姿勢を維持できない人”が対象だよ。
テーブルに手が届きにくくなる
傾斜をかけた分だけ体がテーブルから遠くなるので、手が届きにくくなり食事などの手を使い作業がしにくくなります。
加えて、傾斜の分だけ視線が下向きにくくなるのでその影響も考慮しなければなりません。

ただ、傾斜をかけないと姿勢が維持できない場合は、テーブルの位置と高さ、車いすの傾斜を本人が作業できるちょうどいい塩梅に調整する必要があります。
普通のテーブルでそればできればよいのですが、難しい場合はキャスター付きのテーブルを使用するとうまくいく場合もあります。

まとめです。
ティルト車いすは「姿勢の保持がしやすい」が、「身体拘束」と「手作業のしにくさ」に注意
リクライニング車いすもティルト車いすもとても便利な車いすです。
とちらにもメリット・デメリットがありますが、両方の機能を兼ね備えたティルト・リクライニング車いすもあります。
その方の能力や環境に合わせて使い分けてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ふくまつ

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